吹奏楽器の演奏者にとって、
非常に参考になるものがあった。
今回のゲストは、文楽太夫の豊竹咲甫大夫。
文楽の太夫は、普通の正座ではなく、
少し変わった座り方をする。
尻の下に「尻ひき」という小さいイスを置いて、
足も爪先立ちの姿勢で座るのだ。
その為、少し中途半端な感じを受ける座り方になる。
この独特の座り方の目的は、
強い声を出すためなのだそうだ。
普通の正座では腹が引っ込んでしまうので、
腹式呼吸ができなくなり、
強い声が出せなくなる。
一方、文楽太夫の座り方なら、
上半身は立った時と全く同じ姿勢になるので、
腹式呼吸が可能になるという。
なるほど、確かに正座をした状態では、
大きな強い声は出しにくい。
あぐらでも同じだ。
イスに座る場合も同じことが言える。
背中をイスにもたらせると、
当然、腹が引っ込んでしまうので、
腹式呼吸はやりにくくなる。
背筋をピンと伸ばし、
腹を前に出し気味にして、
ようやくなんとか腹式呼吸ができるようになる。
つまり、腹式呼吸を必要とする吹奏楽では、
座った姿勢で吹くには、
かなりの注意を必要とするのだ。
少しでも気を抜けば腹がへっこんでしまう。
サックスやトランペットなど、
吹奏楽器を演奏する人は、
練習する時に座って練習している方が多いだろう。
ずっと立ち続けていると疲れるから仕方ない
と言ってしまえばそれまでだが、
やはり、練習効果を期待するなら、
立って吹くようにした方がいい。
実は私も、この10数年間、
サックスは常に座って練習していた。
サックスは重いのだ。
しかもテナーは。
腰痛持ちの私としては、
座って吹いた方が楽だということもある。
だが、座って吹いたときと、
立って吹いたときを比べると、
立って吹いたときの方が明らかに音が大きく強い。
音の「抜け」もずっといい。
腹式呼吸が十分に機能しているからだろう。
私の場合、
長年の古傷である左手の腱鞘炎が悪化してしまって、
1年ほど前から
左手の負担を軽減するために立って吹くように変えた。
左手の痛みが減っただけでなく、
楽に音が出るようになった
という思わぬ副産物があった。
もちろん、その理由が
腹式呼吸が以前より楽にできるようになったこと
だとは、今の今まで気付かなかった。
なんか、すごく楽に吹けるなぁ〜
という漠然とした感覚だけを信じて、
ずっと立って吹くスタイルを続けていたのだった。
そして、楽に吹けるようになった理由に、
ようやく今気付いたのだ。
その程度のことも分からなかったのか?
愚かと言ってしまえばそれまでだが、
一生気づかないよりはましだろう!
慣れれば座ってだって腹式呼吸はできるぜ!
という人もいるだろう。
だが、座りながら腹式呼吸ができる姿勢を保つのは、
結構きつい。
やってみればわかる。どれだけ大変か!
そんな思いをするよりも、
素直に立って吹けばいいのだ。
よくよく考えてみると、
吹奏楽器奏者で、座って練習する人はいても、
ボーカリストで、座って練習する人は見たことがない。
座って発声練習する人などいない。
劇団員が発声練習する時は、いつも立っている。
発声こそ、腹式呼吸を最も必要とするのだから当然なのだろう。
吹奏楽器だって、
発声に負けず劣らず腹式呼吸を必要とするはずだ。
ならば、それに準じた演奏姿勢を採用するべきなのだ。

